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12月25日

「そういえば、あの本発売してたっけ?」

出来れば今日は外に出たくない。
でも、今日行かなきゃおそらく年明けまで…いや、ずっと行けなくなるかもしれない。
皮肉なものだよ。
今日に限って予定が無いだなんて…

渋々思い腰を上げ、普段着の上に上着を羽織るだけの気の抜けた服装で外に出た。



「あれ?もしかして…」
そうやって書店で声をかけてきたのは小学校に入る前からの知り合いで、俺の初…
「久しぶりだね。元気だった?」
「まぁそれなりにやらせてもらってるよ」
「こんな日になんでこんな所にいるの?彼女は?」
「そんな人いたらこんな所にいねぇよ。」
「ふぅん…そうなんだ…」
「それにお前だって…」
「うるさいな」
そんなちょっと照れた顔は当時のことを思い出させた。

「中学卒業以来か?会うの」
「そうだね」
3年ぶりにしては打ち解けて話すことができた。
なんだかんだで当時はそれなりに仲が良かった。
今、思えばあの時は両想いだったんじゃないか、そんなことすら思っていた。
それでも俺は『あの日』…

「こんな所で立ち話もアレだ。どっか行くか?」
その時の俺はいやに男らしく見えて、そういうときに限って中が詰まっている財布が憎らしくも思えた。


それからはあっという間だった。
三年も会っていなかったんだ。
話すことなんていくらでもある。
元々、趣味も合っていたので話すことには事欠かなかった。

「もう、こんな時間か…」
そんなことを言いながら、俺は家まで送っていくことにした。


はぁーと手に息を吐きながら
「寒いね。」
そういいながら『あいつ』は俺の想いを知ってか知らずか肩をピッタリと体に擦り寄せてきた。
多少、歩きづらいが悪い気分ではない。

そうしている間も無常にも時は過ぎていった。

「また、会えるといいね。」
「そうだな。」
「それじゃあ…ありがとう。」
そういって『あいつ』は駆け出し、こちらを振り向くことはなかった。
最後に見えた『あいつ』の顔は『あの日』と同じで儚げだった。
「あ…」
俺は反射的に手を伸ばし、その細い腕を掴もうとしたが理性が働きそれを止めてしまった。
『あの日』と…卒業式と同じように…
また…諦めてしまった…


「また、会えると…か。」
体に残る温もりと別れ際の『あいつ』の顔が俺をやけに感傷的にさせた。

「あ、漫画買うの忘れた…」
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